夏待ち

夏待ち

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0、 「暑い……」  梅雨明けが発表されて、これで三日になるだろうか。  今まで空にはびこっていた、暑い雲はその姿を消し、そのかわりに太陽が容赦なく照り付けていた。  目暮から連絡があって、現場に駆けつけた時には、暑さなどまったく気にならなかったというのに、事件が片付いてしまえば、暑さばかりが気に掛かる。  じんわりと浮かんでくる汗を、手の甲でぬぐった新一は、のろのろと進めていた足を止めると、空を見上げた。もう四時になろうというのに、気温が下がる様子がまったくない。 「あーあ。雨でも降らねえかなあ」  ぽつりとつぶやいた新一を、平次はあきれたように見やり言った。 「せやかて、工藤。傘もないのに降られたら、今度は濡れたゆうて、文句言うやろ」  そんな平次の言葉に、新一は、ふんっと鼻を鳴らすと、もう一度ついっと空を見やった。 「これで降ると思うか?」 「……降らんやろな」 「分かってんなら、言うな。あー、暑い」 「やったら、暑いっちゅうのも、いいなや? 夏は暑いもんと決まっとる」  言った平次に、新一はむっとしながら、横並んでいる平次に向かって言った。 「てーか、てめーが、こんなくっついてるから、暑いんだろ? ちったあ離れろよ」 「せやかて、工藤のコト好きやもん」  にかっと笑いながら言った平次に、新一は思わずギョッと目を見開きながら、じりっと後退った。 「なんやねん! 何で逃げるねん!」 「何でって、普通逃げるだろ。つーか、てめー、暑さの所為で、頭どうかしたんじゃねーか?」 「せやなぁ。こう毎日三〇度超えとったら、頭も――」  うんうん、と大きく頷きながら言いかけた平次は、そんな自分の言葉を反芻してはっと我に返ると、新一に向き直った。 「って、工藤! なんやねん! その言い草はっ!」  顔を真っ赤にしながら言った平次に、新一はぶっと吹き出した。 「何がだ?」 「何がって、俺はいたって正気やで!」 「まあ? おかげで、一瞬暑さもぶっ飛んだけど?」  くすりっと笑った新一は、止まってしまった足を進めながら言った。 「つか、てめーの冗談につきあってられるほど、俺も暇じゃねーしな」 「なんや――。最初から、冗談やて、決めつけとるんか?」 「ここで俺が本気にしたら、それこそ妙な話しになるだろ?」  くすくすと笑いながら言った新一に、平次は、はははっと乾いた笑いを浮かべながら言った。 ■ 夏待ち ■ A5オフ 76P イベント販売価格 ¥800 Novel 綾部 澪 

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0、 「暑い……」  梅雨明けが発表されて、これで三日になるだろうか。  今まで空にはびこっていた、暑い雲はその姿を消し、そのかわりに太陽が容赦なく照り付けていた。  目暮から連絡があって、現場に駆けつけた時には、暑さなどまったく気にならなかったというのに、事件が片付いてしまえば、暑さばかりが気に掛かる。  じんわりと浮かんでくる汗を、手の甲でぬぐった新一は、のろのろと進めていた足を止めると、空を見上げた。もう四時になろうというのに、気温が下がる様子がまったくない。 「あーあ。雨でも降らねえかなあ」  ぽつりとつぶやいた新一を、平次はあきれたように見やり言った。 「せやかて、工藤。傘もないのに降られたら、今度は濡れたゆうて、文句言うやろ」  そんな平次の言葉に、新一は、ふんっと鼻を鳴らすと、もう一度ついっと空を見やった。 「これで降ると思うか?」 「……降らんやろな」 「分かってんなら、言うな。あー、暑い」 「やったら、暑いっちゅうのも、いいなや? 夏は暑いもんと決まっとる」  言った平次に、新一はむっとしながら、横並んでいる平次に向かって言った。 「てーか、てめーが、こんなくっついてるから、暑いんだろ? ちったあ離れろよ」 「せやかて、工藤のコト好きやもん」  にかっと笑いながら言った平次に、新一は思わずギョッと目を見開きながら、じりっと後退った。 「なんやねん! 何で逃げるねん!」 「何でって、普通逃げるだろ。つーか、てめー、暑さの所為で、頭どうかしたんじゃねーか?」 「せやなぁ。こう毎日三〇度超えとったら、頭も――」  うんうん、と大きく頷きながら言いかけた平次は、そんな自分の言葉を反芻してはっと我に返ると、新一に向き直った。 「って、工藤! なんやねん! その言い草はっ!」  顔を真っ赤にしながら言った平次に、新一はぶっと吹き出した。 「何がだ?」 「何がって、俺はいたって正気やで!」 「まあ? おかげで、一瞬暑さもぶっ飛んだけど?」  くすりっと笑った新一は、止まってしまった足を進めながら言った。 「つか、てめーの冗談につきあってられるほど、俺も暇じゃねーしな」 「なんや――。最初から、冗談やて、決めつけとるんか?」 「ここで俺が本気にしたら、それこそ妙な話しになるだろ?」  くすくすと笑いながら言った新一に、平次は、はははっと乾いた笑いを浮かべながら言った。 ■ 夏待ち ■ A5オフ 76P イベント販売価格 ¥800 Novel 綾部 澪