yumemigusayumemigusa

薄ら氷の桜

  • 物販商品(自宅から発送)
    発送までの日数:7日以内
    ¥ 1,200

0、  後ろポケットに突っ込んであった携帯が、ぶるりと震えて、事務所のソファーで本を読んでいたコナンは、「うわっ」っと小さな声を上げて立ち上がった。  そんなコナンを見やり、小五郎が散らかしたビールの缶や書類を片付けていた蘭が、首を傾げながら言った。 「コナンくん、どうかしたの?」 「な、なんでもないよ。携帯がぶるってして、びっくりしちゃっただけ」  言いながら、へへへっと笑ったコナンは、ポケットから携帯を取り出すと、ちらりっと発信人を確認した。そこに表示された『服部平次』の名に、コナンは蘭に気付かれないように舌打ちした。 「僕、ちょっと電話してくるね」  そう宣言して、事務所を出たコナンは、急いで自分の部屋に足を向けた。  部屋に入って一息ついたコナンは、ようやく着信ボタンを押した。回線が繋がって「もしもし」と言おうとした、その瞬間、『遅いっ!』と言う大きな声が耳元で響いた。  慌てて耳をふさいだコナンは、顔を顰めながら携帯を耳元から離した。  少しばかり出るのが遅れただけで、何故ここまで言われなければならないのか。一瞬、このまま切ってやろうかと思ったが、どうにか思い留まったコナンは、思い切り不機嫌そうな声を出した。 「うっせぇな。おっちゃんの事務所にいたんだよ。蘭がすぐ横にいるのに、そうすぐに出られるかよ」 『別に、かまへんやん』 「お前は構わなくても、オレが構うんだよ」 『なんや、面倒やな』  言った平次に、コナンは思わず深い溜息をついた。 「で? なんか用か?」 『別に、用って程の事でもないんやけどな』  その言葉に、コナンは思わずむっとした。  よく、平次はこうやって、わけもなく電話をかけてくる。別にそれが悪いとは言わないが、毎回毎回、それに付き合わされる、こちらの身にもなってもらいたい。  新一宛に、平次から電話が掛かってくるのなら、まあ、それほど不自然ではない。だが、平次からコナンに電話が掛かってくると言うこの状況は、はっきり言って不自然なのだ。 ■ 薄ら氷の櫻 ■ A5/オフ/表紙フルカラー  84P 平新 イベント販売価格 ¥ 900 Novel  綾部 澪 Illustration  小椋さよこ さま

0、  後ろポケットに突っ込んであった携帯が、ぶるりと震えて、事務所のソファーで本を読んでいたコナンは、「うわっ」っと小さな声を上げて立ち上がった。  そんなコナンを見やり、小五郎が散らかしたビールの缶や書類を片付けていた蘭が、首を傾げながら言った。 「コナンくん、どうかしたの?」 「な、なんでもないよ。携帯がぶるってして、びっくりしちゃっただけ」  言いながら、へへへっと笑ったコナンは、ポケットから携帯を取り出すと、ちらりっと発信人を確認した。そこに表示された『服部平次』の名に、コナンは蘭に気付かれないように舌打ちした。 「僕、ちょっと電話してくるね」  そう宣言して、事務所を出たコナンは、急いで自分の部屋に足を向けた。  部屋に入って一息ついたコナンは、ようやく着信ボタンを押した。回線が繋がって「もしもし」と言おうとした、その瞬間、『遅いっ!』と言う大きな声が耳元で響いた。  慌てて耳をふさいだコナンは、顔を顰めながら携帯を耳元から離した。  少しばかり出るのが遅れただけで、何故ここまで言われなければならないのか。一瞬、このまま切ってやろうかと思ったが、どうにか思い留まったコナンは、思い切り不機嫌そうな声を出した。 「うっせぇな。おっちゃんの事務所にいたんだよ。蘭がすぐ横にいるのに、そうすぐに出られるかよ」 『別に、かまへんやん』 「お前は構わなくても、オレが構うんだよ」 『なんや、面倒やな』  言った平次に、コナンは思わず深い溜息をついた。 「で? なんか用か?」 『別に、用って程の事でもないんやけどな』  その言葉に、コナンは思わずむっとした。  よく、平次はこうやって、わけもなく電話をかけてくる。別にそれが悪いとは言わないが、毎回毎回、それに付き合わされる、こちらの身にもなってもらいたい。  新一宛に、平次から電話が掛かってくるのなら、まあ、それほど不自然ではない。だが、平次からコナンに電話が掛かってくると言うこの状況は、はっきり言って不自然なのだ。 ■ 薄ら氷の櫻 ■ A5/オフ/表紙フルカラー  84P 平新 イベント販売価格 ¥ 900 Novel  綾部 澪 Illustration  小椋さよこ さま