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雨崩れの空に一段下る

すべて、上手くいっていたはずだった。    それが音を立てて崩れていくのが、分かった。  きっかけは、何だったのか――。  いや、それは自分が一番よく知っていた。  ふいに触れた手が、すべてを狂わせたのだ。  虚を衝かれた、とでも言うのだろうか。  何の心構えもなく触れた服部の手は、  冷たく冷え切っていた俺の手には   とても暖かく感じられた。  その暖かさが、恐怖を呼んだ。  何故、そう思ったのか、自分でも分からない。  だが、危険だ、そう直感が告げていた。  だから、その手を振り払った。  そう。  それが均衡を狂わす『鍵』だった。 ■ 雨崩れの空を一段下る A5/オフ/表紙フルカラー  76P Novel  綾部 澪 ・ かわい いつか Illustration  小椋さよこ さま

すべて、上手くいっていたはずだった。    それが音を立てて崩れていくのが、分かった。  きっかけは、何だったのか――。  いや、それは自分が一番よく知っていた。  ふいに触れた手が、すべてを狂わせたのだ。  虚を衝かれた、とでも言うのだろうか。  何の心構えもなく触れた服部の手は、  冷たく冷え切っていた俺の手には   とても暖かく感じられた。  その暖かさが、恐怖を呼んだ。  何故、そう思ったのか、自分でも分からない。  だが、危険だ、そう直感が告げていた。  だから、その手を振り払った。  そう。  それが均衡を狂わす『鍵』だった。 ■ 雨崩れの空を一段下る A5/オフ/表紙フルカラー  76P Novel  綾部 澪 ・ かわい いつか Illustration  小椋さよこ さま